やばいブログ

何がやばいのかは想像にお任せします。

【ドキュメンタリー】【映画】『香川1区』本編&千秋楽トークイベント感想 選挙ドキュメンタリーの最高傑作!

ポレポレ東中野にて先月29日に千秋楽を迎えた『香川1区』について、上映後に行われたトークイベントを含めた感想を書いていきたいと思います。

作品紹介

立憲民主党所属の衆議院議員である小川淳也の選挙活動を追った作品です。

大島監督は2020年に同じく小川淳也を扱った『なぜ君は総理大臣になれないのか』(通称『なぜ君』)を制作しており、本作はいわば「続編」にあたります。『なぜ君』はドキュメンタリーとしては異例の観客動員3万5000人を超える大ヒット作で、本作も満を持して全国数十の劇場で公開されました。

『なぜ君』及び本作は政治家を扱うドキュメンタリーですが、小川の政治思想や政策議論などはほとんど映されません以前紹介した完黙』と同様、あくまで選挙に関するドキュメンタリー映画です。

一見してわかる本作の特徴は、「早さ」と「長さ」です。本編では小川が立憲民主党の代表選に挑むまでが描かれていますが、代表選があったのは2021年11月30日で、本作の公開日は12月24日。撮影終了から公開までわずか3週間半という超速公開でした。

  • パンフレットによると、監督は映像を撮ったそばからスタジオに送って同時並行で編集作業を行っていたそうです。超重労働!

  • さらに言えば、パンフレットには代表選の翌日に発表された小川の政調会長就任まで記載されています。

そして、本作の上映時間はドキュメンタリーどころか映画一般からしても長尺の部類に入る156分シン・エヴァンゲリオンとほぼ同じ長さです。

しかし、内容はそんな慌ただしさや長さを感じさせない、「日本の選挙」というものを描ききった傑作に仕上がっていると言えます。以下、感想を書いていきます。

内容

慌てまくりの小川淳也

本作を通じて感じるのは、小川淳也という人はとにかく「思ったことをそのまま言動に出してしまう」人間だということです。

最も如実に現れているのが、前半において政治評論家の田崎史郎と喧嘩になるという面白シーン。小川の出馬する香川1区には新たに日本維新の会から候補者が擁立されることになります。この自体に小川は大慌て。「維新は自民以上に野党から票を食うんですよ!」と車中で怒りをぶちまけました。

そして、小川は維新のミーティングの場に乱入し、出馬を取り下げるよう要請するという挙に出ます。維新の音喜多駿が「小川淳也さんはやはり総理大臣にはなれない!」というタイトルで見解を配信するなど全面的な晒し上げを食らってしまいました。

その直後に小川のもとを訪れた田崎史郎。TVでよく見るニヤニヤした表情で「出馬の判断は政党に権利があるんだから、ああいうことをすべきじゃないよ」とツッコミを入れると、小川は「そんなことを言うから自民一強が続いてるんですよ!」といきなりマジギレ!

その後も小川はどんどんヒートアップしてしまい、「最後まで一本化の努力をするのが当然でしょう!」「あなたは現場の感覚がわかっていないんですよ!」などありったけの怒りをぶちまけます。小川の忙しない動きと涼しい顔をしている田崎コントラストが悲しいほど際立っているシーンです。

カメラはその後、車中で小川が田崎に電話で謝るという非常に気まずいシーンも捉えています。この行きあたりばったり感が小川サイドのシーン全体に漂う空気でした。

政治家としてはどうなのかという感じですが、ドキュメンタリー的には非常においしいキャラクターを持った小川淳也という人間だからこそ、本作は面白い映画になっていると言えます。

余裕綽々な平井卓也

本作では、小川だけではなく対立候補平井卓也側の動きも捉えています。

平井は本作撮影前、初代デジタル大臣に就任しましたが、内輪の会合でのいわゆる「『脅し』発言」が報じられ評判を落としていました。

監督は大臣室にて直接平井にインタビューを行っています。「ああいう映画(前作『なぜ君』)を撮りましたので警戒されてるかなと」と言う監督に「いやいやそんなことないですよ」とにこやかに対応する平井。独特のアルカイックスマイルもあり、異様なオーラを醸し出しています。

香川県はそもそも自民党が強い地域である上に、平井の親族は地元の大手新聞とテレビ局を所有しているという圧倒的なアドバンテージを有しています。監督の街頭インタビューでも、ほとんどの市民が自民党の勝利を疑っていません

  • このあたりは、『完黙』における茨城7区の人々を連想させます。まああちらほど強烈ではありませんが…

さらに監督は、平井一族の所有する『四国新聞』における露骨な偏向報道を取り上げます。デジタル庁発足時には1面から6面まで全てをデジタル庁特集で埋めるという豪快な紙面を作り上げ、小川と維新のいざこざに関しても細かい動きまで執拗に取り上げ続けていました

とはいえ、監督はこうした光景を「けしからん」と糾弾するわけではなく、「香川1区の平井はこんなに強い!さあ小川、どう出る?」という盛り上げ要素として取り上げている雰囲気がありました。直後には新聞を読んで思いっきり落ち込む小川を映したりしていて、平井側に立っているように見えなくもありません。

しかも、これら前半の要素は全て後半へ向かう前フリとして機能しているのがこの映画の恐ろしいところです。結果は既に周知されているので言ってしまいますが、そんな平井に小川は勝利するのです。

対照的な選挙戦

10月19日に公示日を迎え、3陣営の選挙運動が本格化します。観ているこちらは先に結果がわかっているだけに、お互いの様相を独特のスリルの中で見つめることができます。

本作では、小川陣営と平井陣営の戦い方の違いが強調されていました。小川は自転車であちこちを回りつつ、聴衆にマイクを向けて対話を試みるという方法を取ります。中には女子高生なども言葉をかけており、「国会議員の選挙」のイメージとはかなり異なる雰囲気です。

さらに、組織的に選挙スタイルの改革に取り組む様子として「小川淳也さんを心から応援する会」(オガココ)なるグループが取り上げられます。若い女性で構成され、選挙事務所の内装をオシャレな雰囲気に変えてみたり、インスタグラムでの発信を行うなど野心的な試みを繰り広げていました。

一方の平井陣営は典型的な自民党という感じで、出陣式には黒スーツの支持者達が十重二十重に平井を取り囲み、中心から堂に入った感じの演説を行っています。QRコードを掲げており「ぜひダウンロードしてください」(QRをダウンロード」ってなんだろう)と呼びかけているのに誰もやっていないのが印象的でした。

維新の町川順子の出陣式も取り上げられていますが、町川は香川2区の玉木雄一郎の元秘書で、ことによっては台風の目になりそうなポジションなのですが、全く意に介さず楽しげに演説をしており、そのまま映画からもフェードアウトしてしまっていました。

この頃には選挙ジャーナリストとして有名な畠山理仁も取材に駆けつけていました。畠山は「平井陣営の聴衆はほとんど動員ですね」とさらっと言ってしまっています。また、ジャーナリストの星浩も「全く対照的な戦い方で面白い」とコメントしていました。

田崎史郎と畠山理仁と星浩同じ映像で観ることができるのはおそらくこの映画だけでしょう。しかし、本作の本領はここからです。投票日が近づくにつれ画面はどんどんとカオスな状態になってゆくのです。


ここから後半部分です。


巻き込まれる監督

映画では、小川陣営内部からも、ジャーナリストからも「小川は厳しい」という評価がなされていました。しかし、選挙戦中はおそらく平井陣営側の方に情勢の厳しさが伝えられていたのでしょう。あんなにニコニコ笑顔だった平井卓也が、演説の場では豹変します。

「今回の選挙はフェアじゃない!あんなPR映画を作られて、あれが選挙運動なら国会議員は皆映画を作りますよ!」いや、新聞とテレビ局持ってる人に言われましても…。

ところが、ここで監督が驚きの行動に出ます。撤収を始めた平井陣営に向かって駆け寄ると「PR映画ってどういうことですか!?そういう言い方はないんじゃないですか!?」と猛反論!たまたま側で取材をしていたNHKの記者がオロオロしていたのが面白かったです。

前作『なぜ君』のヒットは香川1区にも当然届いており、それが故に監督も選挙戦の渦中に巻き込まれることになってしまったわけです。これまで観察者の立場を保ってきた監督が映画の中に引きずり込まれていく胸熱シーンです。

そして、ここから平井陣営と監督側は決定的な対立を迎えます。撮影中、「市民」と名乗る謎の人物がカメラの前に立ちはだかり「勝手に撮ってええんか」「警察呼ぶわ」と告げ、そのまま警察に通報してしまいます。勿論お咎めなし、どころか逆に監督側が気遣われたようです。

岸田首相の応援演説の会場には「映画は報道じゃないから」の一点張りで入場させてもらえずひと悶着。別の演説では前田亜紀プロデューサーがカメラを構えていると「お前立憲か」「何しよん」とガタイの良い中年男性がズンズンと迫ってくる恐怖の光景が。

こうした事件から、映画はさらに観客の想像外の方向へ突き進んでいきます。

監督反撃!

監督は、平井陣営の選挙戦術のディープな部分について掘り下げ始めます。

監督のもとを訪れた女性が「会社から受け取った」という書類のコピーを広げます。それは平井卓也主催のパーティー券の申込書で、申込み枚数は10枚と書かれているのに対し、出席人数は3人と規定されています。差額を「収入」として扱い政治献金の規制をすり抜ける手法です(本当はアウトです)。

さらに、カメラは投票日2日前の高松市役所を通りの向かいから映します。期日前投票に訪れた人々が、次々に隣のビルへと吸い込まれていきます。ビルの2階を地元の自民党県議が借りており、そこで投票確認が行われているのです。

ここで監督は、ビルから出てきた人に「すいません、上から言われて来たんですけど…」と投票確認に来た体を装って事実確認をしようとします。うわあ、悪いなあ監督!相手は何も疑わず「受付で名簿にメモするだけでいいですよ。会社で来ているときは社名を書いてください」と親切に自白してしまいます。

こうして掴んだ事実を公開質問状として平井側に送りつけると、パーティー券については「こちらが作成したものではないと思うが詳細を把握していないので答えられない」との回答、さらに投票確認については黙殺。妙にリアルな温度差があって怖いです。

ヤミ献金に投票確認、どちらも政治についてある程度知識のある方なら聞いたことがあるであろう有名なテクニックです。それ自体は真新しい話ではありません。しかし、こうして映像で実際の様子を見せつけられると、やはり衝撃を受けるのではないでしょうか。

この一連のシーンは平井陣営に虐められまくった監督サイドの反撃パートともみることができます。まさにお互いの力を尽くした殴り合いという感じで、思わず拳を握りしめたくなりました。

そして大団円

投票日前日の最後の呼びかけが映し出されます。娘の要望で突然タスキの表記を変えるというサプライズもありつつ、最後の演説に。「後1分で20時になるので、マイクを切らなければいけません」と、最後の言葉を紡ぎます。

「彷徨っている人たちや、苦しんでいる人たちへ、道を照らす、光になれるような…5、4、3、2、1ありがとうございました!」まさかの時間切れで終了。最後まで聴衆へネタを提供する小川さんです。

投票日の20時が迫る選挙事務所。支援者は固唾をのんでTV画面を見守ります。そして20時。「自民党が大きく議席を減らす見込み…」というアナウンサーの言葉を遮るように歓声が湧きます。えっ、なんで?カメラがうまく写せていませんが、実は速報開始と同時(ゼロ打ち)で小川の当確が出ていました。

立ち上がる支援者、号泣する娘、やがて小川が前に出てきて何度も頭を下げ、そして改めてTV画面に大きく当確が映し出され、より大きな歓声が上がります。この間の編集はノーカットの長回しになっていて、とても臨場感がありました。

一方の平井の選挙事務所は、どうも監督は取材できなかったようで外から遠巻きに撮影していますが、天井一面にびっしりと貼られた大量の推薦状を嫌がらせのように一つずつ写していて笑いました。

勢いに乗った小川はそのまま立憲民主党の代表選に出馬しますが、3位で落選。その日の夕方に有楽町駅前で対話集会を開きます。小川が「他に質問のある方はどうぞ」と呼びかけ、映画は終わります。

感想

奇跡起きまくり映画

ドキュメンタリー撮影はしばしば「『奇跡』を待つ仕事」と評されることがあります。

劇映画と違い、ドキュメンタリーはカメラの前に映るものを制御することができません(制御してしまう人も稀にいますが…)。制作側ができる最大限のことは編集ぐらいであり、基本的にはその時「面白いこと」がたまたま起こってくれない限り傑作にはなれないのです。

本作はそんな「ドキュメンタリーの奇跡」がこれでもかと起きてしまっているという点で特異な作品です。撮影前の時点で平井のデジタル相就任スキャンダル発覚といった出来事があり、前作の時とは比べ物にならないほど注目度の高い選挙戦となっていました。

さらに、選挙戦が始まると維新の電撃出馬、それに伴う小川のパニックという事件を撮ることができたし、平井の予想外の劣勢と、それに伴う監督との対立が映画を更に盛り上げていきます。

そして、何よりもの「奇跡」は小川が初の自民党優勢の結果の中での選挙区当選を成し遂げたことでしょう。監督どころか政治関係者も全く予想していない、香川の政治史に残る大事件の現場を撮ってしまったのです。

さらに、前作共に小川が発言している「政治は勝った51が負けた49を背負うもの」という台詞がまるで伏線であったかのように本当に得票率51%で勝っているところなど、何かの陰謀だと言われても納得してしまいそうな出来過ぎ具合です。

この映画の特報はまだ選挙結果どころか衆院解散もされていない9月1日に発表されていました。そのため、香川1区の開票速報は住んでもいない筆者まで思わず注目してしまい、そして画面の中の支援者の人々と同じように驚いたわけです。そりゃあ観に行くしかなかったですよね。

選挙ドキュメンタリーという難しいジャンルに二度も挑戦し、そして前作を超える衝撃作を生み出してしまった監督は、なんというか本当に「持ってる」と思いました。

友情・努力・勝利

このような奇跡的展開を迎えた香川1区の全記録と言える本作は、まるで少年漫画のようなエンターテイメント性の強い作品に仕上がっていました。

漫画と同様、ドキュメンタリーにおいてもキャラクターは重要です。本作ではまさにそのキャラクターが絶妙な配分となっていました。主人公の小川淳也についてはここまで散々語ってきましたが、それを支えるメンバーも個性的です。

小川とは対照的にしっかりしていてやり手の印象を受ける政策秘書坂本広明、前作同様応援演説での強烈なシャウトが圧倒的な存在感を誇る経済学者の井手英策、小川の所業に時にツッコミを入れつつ全力で支える妻と娘たち、息子を叱咤しつつ温かく見守る両親…。

「頼りないが思いは熱い主人公と、その成長と成功を手助けする周囲の人々」という構成は王道の漫画作品そのもの。自民党というあまりに強大な敵に立ち向かって勝利するという「友情・努力・勝利」の方程式が展開されていました。

その一方、自民党・平井にも支持される合理的理由があり、逆に小川の理想には実利的な部分が薄いことも映画の中では指摘されています。それでも勝敗はあっさりと決まってしまうという選挙の恐ろしさを示す作品にもなっていました。

前作との違いは?

個人的には、前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』よりも今作のほうが面白かったです。これは本当に個人の価値観としか言いようがありませんが、おもに3つの点が勝っていました。

1つ目は、小川の「描き方」がマイベストだったこと。前作を観た時になんとなく「小川淳也って割とヤバい人だよね」という感想を持ったんですよ。本来なら即答でごまかさなきゃいけない場面で素直に悩んじゃったり、頭は良いのに機転が利かない感じ。

政治家としての評価はともかく、筆者はヤバい人を見るのは大好きなので、ドキュメンタリーとしてはもっとそこを前面に押し出してほしいな、と思っていました。まあ素材量の問題もあったのでしょうが、前作にはその点で「手加減」が感じられたんです。

しかし本作の監督は容赦がない。筆者の好きな小川のヤバい部分を積極的に撮っていて、秘書の坂本や両親からのツッコミ発言も交えるなど、小川のキャラクター性を浮き上がらせる編集が個人的な趣向にぴったりハマっていました。

2つ目に、香川1区全体を取り上げたことです。そもそも筆者が前作を観ようと思ったのは小川に興味があったというよりも、旧民主党から希望の党への鞍替えという特殊な境遇に興味を持ったからでした。カッコつけた言い方をすれば、キャラクターより世界観に惹かれたという感じです。

その意味で本作はまさにタイトルに偽りなしで、「香川1区」という地域の世界観や空気感を臨場感たっぷりに描いていました。監督が民選挙の闇に突っ込んでいくところは本当にドキドキでしたね。

3つ目はやはり全体の展開ですね。こればっかりはどうしようもない部分です。しかし、監督が積極的にカメラを向け続けたからこそという面もあると思います。あっぱれです。

もう一つ、前作との大きな違いを挙げると、それは何より「前作の存在」といえます。考えてみれば「オガココ」の結成や運動の刷新、監督と平井の敵対には「前作のヒット」という要素が絡んでいます。

ある意味でこの映画は前作の存在があったからこそそれを超えることが出来た、というメタ的な構造にもなっているわけです。これもドキュメンタリーならではですね。

おわりに

本作は、実は政治に興味がない人のほうが楽しめるのではないかと思います。政治に興味があって、真剣に考えている人はある程度バイアスのかかった見方をしてしまうような気がするのです。

例えば小川を応援する側であれば「小川の実績をもっと取り上げてほしい、こんなのネガキャン」と思うかもしれないし、逆に平井を応援する側は「こんな危ないのが勝ってしまうなんて世も末だ」「平井先生の言う通りPR映画だ、選挙介入だ」と思うかもしれません。

本作は政治というよりも選挙を取り上げたドキュメンタリーです。選挙というものは政治よりもさらに知らない部分の多い分野だと思います。これを観れば、選挙というのは単なる通過儀礼ではなく、多くの人々の激しいドラマが存在するのだということがわかるのではないでしょうか。

また、ドキュメンタリーを観たことがない人にも入門編として勧められると思います。多分、ドキュメンタリーが苦手な人の原因の多くは「暗いから」なのではないでしょうか。実際、ドキュメンタリーというのは大抵辛い内容です。

まあそれは当たり前の話で、ドキュメンタリーは現実を描くものであり、現実は辛いものであるから…と言ってしまうと身も蓋もないですが、実際わざわざスクリーンで現実を直視したい、という向きは少ないですよね。

しかし、本作はその現実に信じられない奇跡が起きた現場を捉えた作品です。それがなぜ奇跡的なのかも説明されており、構成も見事で、最後の選挙事務所のワンカットはきっと感動できると思います。

以上、『香川1区』の内容と感想でした。機会があればぜひご覧になってみてください。

(おまけ)千秋楽トークイベント感想

ポレポレ東中野にて4月29日に行われた千秋楽に行ってきました。上映後、およそ1時間のトークイベントがあり、大島新監督と、映画にも出演している畠山理仁さんが登壇なさっていました。

畠山さんは舞台にMacBookを持ち込んでメモを見つつ話すほどの気合の入れようで、取材の中で得た色々な衝撃事件の話をライトな語り口で楽しそうに語っており、大変面白かったです。

畠山さんは本作を試写含め5回も鑑賞した猛者で、その直感からか「ここにいらっしゃる方々の多くもリピーターではないかと思うんですが」と挙手させていました。酷い思想統制です。筆者も2回目だから手挙げちゃったよ!

対する監督は終始冷静でしたが、やはりドキュメンタリー監督というか、政治的にはどちらに肩入れする感じでもなく「撮れ高」中心に語っている感じで大変好感が持てました。畠山さんに乗せられてうっかり維新の悪口を漏らしてしまい焦っていたのも面白かったです。

最後、監督が畠山さんに「それだけ知識があるなら出馬してみようと思わないんですか?」という強烈なパンチかましたところ、記念撮影で畠山さんが小川の着けていた「本人」タスキのレプリカを着せて仕返しになっていたのは笑いました。

(一応誤解のないように言っておきますが筆者の書き方が変なだけで対談は終始和気あいあいとしていました。)

以下、監督と畠山さんの印象に残った発言です。

  • 大島監督

    • 維新出馬の一報を車中で激怒しながらおにぎりを食べているシーンは笑いをこらえながら撮影していた
    • 観た方も思っていると思うが正直田崎さんのほうが正論だと思う。
    • 岸田首相の演説って正直撮っても使わなかったと思う。追い出されるシーンのほうがおいしいなと思っていた。
    • 映画をよく見ると、「勝手に撮ってええの?」と問いかけられた平井は無反応でスルーしている。つまりあれは支持者が勝手にやっていることで、平井は黙認している構図だった。
    • 自民党の人に怒られつつ「この人たちはなんでこんなに映画を盛り上げてくれるんだろう」と内心思っていた。
    • (「PR映画ってなんですか!」の下り)NHKの人も多分上から言われて取材に来たのだろうに巻き込まれてかわいそうな部分はあると思う。
    • 最後、「次の質問ある方どうぞ」の映像を持ってきたのは小川さんの人間性を反映していると思ったから。
    • ヤミ献金と投票確認の下りは訴えられるかもと思ったが、弁護士は「平井側が賢ければ訴えない」と言っていた。実際未だに何も来ていない。
    • 前作は自民党の人も評価していたが、本作は「党派性が出ている」という人が多かった。平井さんの姿をふんだんに映しているのでむしろ宣伝に使っても良いと思うのに。
  • 畠山さん

    • 何度も見ていると2人の感情の高ぶる瞬間がわかる。小川さんは頭の血管が浮き出てくるし、平井さんは瞬きの回数が多くなる
    • 自民党の出陣式はどこもああいう感じ。会社ごとにスーツを着た人が取り囲んでいて、地域の産業の勢力をアピールしている
    • 平井さんの街頭演説もやはりスーツの集団だった。終わったら「やれやれ」という感じで全員西日本放送のビルに帰っていった。(※監督の発言だったかも)
    • 沖縄の投票確認はもっと露骨。投票用紙の写メを撮らせたこともある。(監督はそれを受け「高松市役所は写メ禁止になってました」と発言)
    • スマホがない時代の投票確認はもっとすごくて、典型的なのは津軽選挙の投票確認なんだけど…(複雑過ぎて説明を断念)。
    • 有権者を買収する手口が色々ある。裏庭に突然キャベツが生えていて、剥くと中から万札が出てくる。「生えてましたか?」と連絡があって買収完了。
    • その話を別の選挙区でして「お宅もキャベツが生えるんですか?」と聞いたら「そんな事しません!うちはおにぎりに入れますから!」と言われた。
    • (監督から「おにぎりだと米粒でベタベタになりません?」とツッコまれ)ちゃんとラップに包むそうです。
    • 選挙事務所の雰囲気は党によっても違う。維新の選挙事務所は当確が出ると「ウオーッ!」という雄叫びが聞こえる。

監督にサインももらえてめっちゃ楽しかったです。