やばいブログ

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【陰謀論】日本とQアノンを結ぶ70年前の宇宙人

神真都Q」(やまとキュー)という団体が、新型コロナウイルスワクチンの接種会場に侵入し、これまでに5人の逮捕者と本部の家宅捜索を受けています。

神真都Qは単なる反ワクチン集団ではなく、現在の世界秩序を否定し、体制の打倒を目指している反社会的集団です。彼らはアメリカの陰謀論集団であるQアノンの日本支部を標榜し、ドナルド・トランプ元大統領とともに世界を影から支配する闇の組織と戦っていると信じています。

一方で、神真都Qの主張は本来のQアノンとはかけ離れた内容であることがしばしば指摘されています。また、神真都Q以前から日本のQアノンとして活動していた団体もあり、日本はアメリカに次いでQアノンの支持者が多いこともわかっています。

日本におけるQアノンの広がりについて調べていくと、ある70年前の宇宙人事件の流れを引き継ぐカルト集団の存在が浮かび上がりました。

全然違う「日本のQアノン」

宇宙人登場

まず、神真都Qの基本教義を見ていきます。

  1. 新型コロナウイルスは存在せず、世界中の人間に一斉にワクチンと称した毒薬を投与し人口削減するための口実として捏造されたものである。
  2. 人口削減を主導しているのはディープステートと呼ばれる闇の組織だ。彼らは世界のあらゆる機関を支配し、歴史の裏で様々な陰謀を働いてきた。
  3. ディープステートもまた闇の宇宙人に操られている。闇の宇宙人は太古の昔に銀河戦争から逃れて地球へ辿り着き、植民地にすべく侵略した。
  4. 地球には龍神に守られた善なる種族が住んでいたが、闇の宇宙人に騙され、彼らの都合の良い形に洗脳支配されていた。
  5. しかし近年、洗脳支配から覚醒し龍神や宇宙の光の勢力と団結し闇の宇宙人を倒そうとするQという人々が現れた。トランプはQである。
  6. 日本人は善なる種族の遺伝子が最も強い選ばれし民族である。日本人はトランプや光の勢力と団結し、地球をあるべき姿に戻すべきである。
  7. そのため、まずは日本人の覚醒者を増やし、ディープステートに支配された世界秩序を倒す必要がある。

底辺なろう小説みたいなストーリーですが、実は彼らの標榜する「Qアノン」ともほとんどかけ離れた内容です。

Qアノンの基本教義は、朝日新聞藤原学思による以下の内容がもっとも簡潔と言えます。

「世界は小児性愛者の集団によって支配されており、悪魔の儀式として性的虐待や人食い、人身売買に手を染めている」という陰謀論、またはそれらを信じる人たちを指す。信奉者はそうした集団を「ディープステート」(影の政府)とみなし、民主党の政治家やハリウッドスターらが所属していると考えている。

朝日新聞デジタル「Qを追う 陰謀論集団の正体」

このように、本来のQアノンには「宇宙人」とか「龍神」とかは出てこないのです。それどころか、Qアノンの標的は民主党やハリウッドスターといったアメリカ国内の人間に限定されており、日本人が関わる余地は全くありません。

神真都Qのそれと共通しているのはせいぜい2.までで、内容の半分以上は全くの別物。そもそもQアノンはドナルド・トランプを信奉するところに要点があったはずなのに、この内容ではトランプはだいぶ末席に追いやられています。

先駆者にも不審な点が

神真都Qはデモのたびに"We are Q!"と叫ぶなど、我が物顔でQの名前を扱っていましたが、これを苦々しく思っている団体がありました。実は神真都Qが登場する2021年10月よりも前から「日本のQアノン」を名乗っていた団体があったのです。

桃香 (Momoca) QArmyJapanFlynnのGab投稿スクリーンショット

それはQArmyJapanFlynn(QAJF)という団体で、OkabaEriと名乗る人物が2019年頃から主催しているものです。QAJFは本家Qの投稿(QDrop)をまとめたサイト(QMap)を作成するなど、本来のQアノンに近い活動を行っています。

ところが、このQAJFもまた、本家Qアノンと異なる振る舞いが見られていました。上記のとおり、本来のQアノンでは世界を操る闇の組織は「ディープステート」と呼ばれているのですが、QAJF公式サイトでは「カバール」となっています。。

Q/Q軍が戦う相手は “カバール” とよばれる 世界的家族犯罪組織。TVや新聞で報道されず、ネットやSNSでもなかなかQの話題を見つけることができないのは、大手マスメディアやソーシャルメディアのほぼ100%がカバール犯罪組織の一員であり、カバールの犯罪を一般市民に見えないように隠蔽するために存在する、人類の不幸の原因/人類の敵だからである。これらメディア企業の従業員の多くが実はCIAの工作員であり、Qの掃討作戦の対象(起訴状が用意されている)となっている。

QAJF Blog Site「Qムーヴメントとは」、強調は筆者

「カバール」(cabal)は、英語で「秘密結社」を意味する一般名詞です。QAJFはこれ以外でも頻繁に「カバール」という単語を用いており、一部ではEriの英語力が低く翻訳を誤ったのではないかと言われていました。しかしこれをみると、明らかに意図的に使用していることがわかります。

二つの団体の奇妙な点について調べてみると、とあるUFOカルト団体へと辿り着きました。

10年前から続く謎のカルト集団

COBRA

神真都Qの「統括」とされ、逮捕された一人である岡本一兵衛(本名:倉岡宏行)のツイートに「銀河法典」という単語が登場しています。

自分で調べてください。 そして国際法憲法改正は必要ありません。 そして銀河法典国際法改正は必要ありません。 あるのは銀河法典大和Tara大和ソフィアクリストス救済プロジェクト計画に日本の憲法改正の必要があるということの意味、だから日本は承認されてないことをよく考えてみてください。

Ichibei Okamoto 2021年11月24日ツイート(アーカイブ)、強調は筆者

この言葉を検索してみると、"Prepare For Change"(PFC)という団体の日本支部のHPが引っかかりました。

銀河連合に属する存在が精神的に進化して、アセンデッド・マスターと一つに団結したとき、 彼らは内なる法典を見出しました。 それは光の存在同士の関係、闇の勢力と占領下にある惑星への関わり方を規定するものです。 この法典は銀河法典と呼ばれており、 天の川銀河及び他の銀河における連合側のすべての行動は、これを法的基盤としています。

"PFCJ"公式サイト「銀河法典」、強調は筆者

理解に苦しむ文章が登場して困惑しますが、「銀河連合」「闇の勢力」など、神真都Qにも登場する言葉が多く用いられています。関連があるのは間違いなさそうです。

PFCとはどんな団体なのか?公式サイトには「望むべき地球の大変革がコブラの告知により「イベント」と言う名称で行われる事を知った仲間たちによって2015年2月に結成」されたと書かれていました。

やっぱりよくわかりませんが、どうも「コブラ」という人物がキーパーソンのようです。「宇宙」で「コブラ」というとなんとなく孤独なSilhouetteが動き出しそうになりますが、それはまぎれもなくヤツではないでしょう。

調べてみると、"COBRA"とは2012年にインターネット上に現れた人物で、"The Portal"というブログを運営し、以降10年以上に渡り英語圏向けに陰謀論を提供しているようです。支持者は世界中に存在し、その支持者らで作られた国際団体がPFCということのようでした。

コブラは教祖でも宇宙人でも神でもありません。メッセンジャーです。

闇の勢力は地上で相変わらず縦横無尽の情報操作を行っています。私たちが判断に迷うとき、ひとまずコブラに情報を確認してもらい、判断を下します。判断を下せないものも当然あります。それはそれでいいのです。問いに必ずしも答えがあるとは限りませんから。

コブラは 2012 年にブログを始めて以来、毎週のように多くの情報を提供してきました。中には私たち人間の本当の姿という驚愕の真実も具に書かれています。四年分以上のブログを限られた言葉でまとめるのは不可能です。

PFCJ公式ブログ

PFCJの公式ブログに書かれている内容は神真都Qのそれとよく似ていました。そして、ここにはQAJFが用いていた「カバール」という言葉も登場します。

◆闇の宇宙勢力と地上勢力

地上の支配や情報統制をしているのは、地上の闇勢力です。でも、彼らはボスではありません。操り人形にすぎません。彼らを操っているのは、高度な科学技術をもつ闇の宇宙勢力です。地上の闇勢力はカバールイエズス会などと呼ばれており、政治・宗教・産業のあらゆる分野に浸透しています。その下にはさらに細分化されていて、ロックフェラー家、ロスチャイルド家など、世界を牛耳る著名な資産家たちが名を連ねます。彼らの巨大な権力の裏には、彼らを支援する巨大な力があるからこそ、ずっと世界に君臨し続けられるのです。

上に同じ、強調は筆者

さらに、PFCJの公式サイトには「Qアノン」のカテゴリが存在しました。つまり、彼らはQアノンではなく、実際にはQアノンを包摂したPFCという別の団体の支持者だったのです。

さらなる根拠

細かく見ていくと、神真都Q、QAJFとPFCを繋がりを示す様々な情報が見つかりました。

例えば、同じくQを標榜する陰謀論者で神真都Qのデモに頻繁に参加し、団体と密接に関わっていた(ものの現在は無関係を装っている)ジョウスターという人物が投稿した動画に「ニューアトランティス」という単語が登場しています。

「ニューアトランティス」もThe Portalに登場する言葉です。

ニュー・アトランティスとは、圧縮突破のサポートとなる地表エネルギ・グリッドに与えられたコードネームで、イベント後の新しい社会のコードネームでもあります。

PFCJによる和訳記事「ニュー・アトランティス」

また、一般社団法人神真都Q会代表理事であり、実質的な教祖と目されている「」(本名:村井大介)という人物が2021年2月16日に投稿した画像は、COBRAがその4日前に投稿したものと全く同じでした。

ツイートのアーカイブスクリーンショット

(正確には「甲兄」という人物のツイートですが、ウォッチャーからは同一人物として扱われています。)

The Portal "Ascension Plan Update"スクリーンショット

また、「甲」は2021年10月に投稿したツイートで「リサ・レニー」という人物を紹介しています。

リサ・レニーは"Ascension Glossary"というサイトを運営するPFC系のインフルエンサーです(PFCJのサイトに言及あり)。神真都Qが「覚醒セクション」として投稿した基本教義の解説動画に登場する「NAA」「ソフィアクリストス」という単語は、この人物がよく用いている言葉です。

悪魔の血を引くNAAルシフェル達は 自ら始めた善と悪、光と闇の銀河戦争で傷つき追われ、 神々の留守となっている星々の内側に転移すると同時に 全てのゲートを破壊し 空の遮断シールドを最大限にオンにし 外部からの一切の通信と侵入を遮断した

奴らは、 当時12次元、13次元にあった大和星t-ara、大和SOPHIAクリストス、現在の地球を 完全制圧支配する為に、 残されていたプレアデス、ライラ、シリウス、オリオン、等他種族 そして、龍神大和の民、平和種族の女性、子供を そそのかし入り込み、あらゆるものの破壊と虐殺を始めた

甲」が2021年10月にTwitterに投稿した動画書き起こしたブログ記事、強調は筆者

ネガティブ・エイリアン・アジェンダ、NAAは、ホログラフィック インサート/Holographic Inserts、AI 、マインドコントロール/Mind Control などの生物兵器技術を使用して偽の複製された時間フィールドを課すことにより、惑星に別の複数のシード・コントローラー・アジェンダを提供することを強制します。

ADAMANTINE「【リサ・レニー】用語解説: NAA」

Base 360 Grounding Shield は、ライトボディの中心コアが時間内に配置され、360度の中心内から任意のタイムラインに入るトランスハーモニック機能を備えていることを意味します。新しい非分極ベースシールドは、アバタークリストスソフィア意識のための完成したユーカクリスティックボディを構築し始めます。

ADAMANTINE「【リサ・レニー】用語解説: パーソナル キリスト/ Personal Christ」、強調は筆者

多分皆さんはここの下りを読み飛ばしたと思いますが、筆者も読んでいないので大丈夫です。要するに、神真都Qの教義はPFCという団体からの影響を強く受けていることがおわかりいただけたと思います。

どいつもこいつもPFC

一方、神真都Qと敵対しているQAJFも「カバール」というPFCの用語を用いていることは既に述べました。その後調べた所、QAJFとPFCのより直接的な繋がりを示す投稿を発見しました。

2021年4月にQAJFは「地球外計画の歴史と来るべき世界革命」(リンク先は再投稿版)という動画を公開していますが、この動画はPFC系のマイケル・サラという人物が投稿した"History of the Extraterrestrial Agenda & the Coming Global Revolution"という動画の翻訳でした。翻訳にはEriも関わっています。

動画17分20秒頃

また、これらの団体と直接の関わりはないものの、個人で活動するQアノン系インフルエンサーの中にも、PFCやCOBRAとの繋がりが多く見いだせました。

例えば、「トランプが日本人全員に6億円を振り込む」と喧伝したことで有名な「」という人物(本名:金谷真吾。Amebaのプロフィールに掲載されているFacebookが「巫」と同一)も、ツイートにてCOBRAを紹介しています。

さらに、『寝ても覚めても、トランプ!トランプ!』という楽しいタイトルの著書を刊行した公明党出身の元市議会議員である石川新一郎は、Youtube上で「ワシントンレポート」と題したアメリカ政府の機密情報を公開するという触れ込みの動画を配信していました。

2021年3月17日に配信した動画では、ワシントンからの情報として「銀河法典」を紹介しています(ちなみにこの動画で「機密情報」がまさかの茶封筒で送られていることが発覚し、石川氏は炎上してしまったようです)。

今回は、何回かに分けてお伝えさせて頂きますので、本日は開封した封筒の中身を、石川様から伝えてもらいます。

それは、ギャラクシーアライアンスと、アースアライアンスの基本的な理念の内容です。 それを、銀河法典と言います。

「ハッピーネット」による書き起こしスクリーンショット、強調は筆者

ちなみに、岡本一兵衛とジョウスターは過去に石川氏のことを批判するツイートを行っています。大元は同じなのに、お互いに仲良く出来ないのは不思議なものです。

去年の石川新一郎さんみたいなのはアウトすよ。 騙すの簡単なんすよ。 お花畑の頭の人なんか。 チクワン反対してお涙頂戴の芝居と役人に怒る芝居。 これが一番簡単で、一番騙せますから。笑

ツイートのアーカイブ

このように、日本におけるQアノン運動の中心人物たちはそのほとんどがPFCやCOBRAの影響を受けていることがわかりました。彼らは「Qアノン」というバズワードに乗りつつ、実際には異なる団体の教義を広めていたのです。

ルーツは70年前の宇宙人

アシュタールコマンド

実は、COBRAにも思想的なルーツが存在します。COBRAの主張する内容の多くは「アシュタールコマンド」(アシュターとも)という70年前から続く宇宙人信仰の教義に則っているのです(PFCJのサイトにも"Ashtar Command"と題された記事が投稿されています)。

アシュタールコマンドはジョージ・ヴァン・タッセルという人物によって始まった運動です。ヴァン・タッセルは元々エンジニアとして働いていましたが、1947年にカリフォルニア州モハーベ砂漠の巨石「ジャイアント・ロック」に移住し、瞑想によって「超自然的な存在」からのメッセージを受け取ろうとしました。

ヴァン・タッセルは同志を集めて「宇宙キリスト同胞団」(The Brotherhood of Cosmic Christ)というグループを作っていましたが、1952年1月16日に地球に接近する宇宙船からのメッセージを受け取ったと主張すると、新たに「宇宙の智慧」(The Ministry of Universal Wisdom)というUFO研究団体を設立し、テレパシーによる宇宙人との交信を目指します。

1952年7月16日に、ヴァン・タッセルは「銀河艦隊のアシュタール司令官」を名乗る宇宙人からテレパシーでメッセージを受け取ったと主張します。アシュタールは幾度にも渡ってヴァン・タッセルにメッセージを送り続けたといいます。

アシュタールのメッセージの内容は、自分達は高度な知性を持った光の存在であり、水爆実験によって地球が破滅すると予測している、破滅を防ぐために政府に水爆実験の中止を働きかけよ、という黙示録的な要素の強いものでした。

ヴァン・タッセルの主張はまたたく間に話題となり、多くの支持者を獲得しました。ジャイアント・ロックの下で毎年UFOを呼ぶイベントを開くようになり、一時は1万人以上が押しかけたと言われています(ちなみに、ヴァン・タッセルは有名な「ベントラーベントラー」というUFOを呼ぶ呪文の考案者です)。

ヴァン・タッセルは一躍マスコミの寵児となりましたが、その結果、彼以外にも「アシュタールからメッセージを受け取った」と主張する人物が現れだすようになります。メッセージの中にはお互いに矛盾するような内容もあり、運動は次第に混沌をきたしていきました。

特に、ヴァン・タッセルとともに運動をしていたロバート・ショートという人物はその名も「アシュタールコマンド」という独自の組織を作り上げ、「アシュタールは『銀河法執行機関』と共に人類を救済する任務を負っている」という宗教的な教義を唱え始めます。

ショートの「アシュタールコマンド」は既存のスピリチュアル運動のメンバーを呼び込んだため、やがてアシュタールのメッセージはスピリチュアル色の強いものへと変化していきました。ヴァン・タッセルはこうした傾向に異を唱えていましたが、50年代後半にはメッセージは疑似科学とスピリチュアルに塗り固められていきました。

しかし、やがて一部のチャネラーによるUFO着陸予言がことごとく外れたことや、団体の乱立、意思統一がうまくいかなかったことなどが災いし、60年代になるとブームは終焉を迎えました。

銀河戦

しかし、1980年代、「トゥエラ」(本名:テルマ・テリル)という人物の手に寄ってアシュタールコマンドは復活を遂げます。トゥエラはもともと神智学系の作家でしたが、1982年と85年に「アシュタールの公式メッセージ」とする著書を発表し、大ヒットします。

トゥエラは、それまで伝えられていたアシュタールについてのストーリーに大幅な追加設定を加えました。アシュタールは闇の勢力との間の銀河戦争を戦う司令官で、数千年に渡って蓄積された「負のエネルギー」による磁場の崩壊から人類を救おうとしていることになりました。スピリチュアル界隈でしばしば見かけるアシュタールの容姿の設定を作り上げたのも彼女です。

こんな感じの絵(PFCJ公式サイトから)

トゥエラもまた予言を外しましたが、彼女は物理的なUFOの存在を論じることから、次第に精神的な救済に焦点を当てた内容へと移行する手段を取りました。神智学に基づいた複雑な宇宙論を唱え始め、運動の支持者はUFOの着陸よりも「精神の次元上昇」などを目指すようになります。

この頃、トゥエラとは異なりあくまで物理的な宇宙人の存在を主張し続けたのがイボンヌ・コールという人物で、1994年に地球は崩壊し、一部の地球人はアシュタールによる銀河系での特別任務に採用されると予言しました。

もちろん予言は外れましたが、ここで思わぬ出来事が起こりました。90年代にインターネットが民間に普及し始めると、複数のアシュタール系のチャネラーが活発に交流を始め、教義の統一を図り始めます。この時、魂のレベルが重要とされ、物理的な宇宙人やUFOの存在は教義から排除されました。

約束の1994年、現実のUFOを見た人がいない代わりに、「リフトオフしたような感覚」を受けたとする報告が相次ぎます。つまり、コールが予言したUFOとは物理的に乗船できるものではなく、精神を上昇させるスピリチュアルな存在であると解釈され、予言は当たったことになったのです。

こうして、1994年12月には大規模な瞑想イベントが開かれ、アシュタールコマンドは「電子グリッドによってアシュタールコマンド船へのポータルを開く」という部外者にはよくわからない思想へと変化していったのです。

(ここまでの解説はWikipedia[「アシュタール」及びWRSP「Ashtar Command」を参考にしています。)

陰謀論と融合

ヴァン・タッセルの時代から半世紀以上の時を経て、アシュタールコマンドは「銀河戦争」という神話を元に「宇宙人アシュタール」という神を信じ精神修行を行う宗教のような形に落ち着きます。

ところが、2012年に誕生したPFCは、それまであまり触れられてこなかった「闇の勢力」という概念に直接的に切り込み、既存の陰謀論を取り込んで現実世界に敵の存在を見出すという新たな方向性を打ち出しました。

COBRAの発表する記事は「グリッド」「ポータル」「瞑想」という典型的なスピリチュアル用語と「金融リセット」「イルミナティ」「偽旗作戦」などといった生々しい陰謀論用語が混在する異様な雰囲気が漂っています。

COBRAは「闇の勢力」と共にあまり言及されない「銀河法」についても「銀河法典」(Galactic Codex)という具体的な内容を考案し(アシュタール系の団体の中でこの言葉を用いているのはPFCだけです)、地球外の戦いと共に現実世界でも秘密の革命運動が遂行中なのだと述べました。

そういう意味でPFCの教義は一度捨てられた現実路線への回帰という一面もある一方、宇宙人やUFOといったオカルトではなく、現実の人間同士の争いを予言するという方向へ転換しており、非常にグロテスクなものとなっていると言えます。

さらに、現在ではUFOや宇宙人の「証拠」を見出すことが難しくなった一方で、陰謀論既に起きた出来事に後付けで理由を与えるというメソッドで支持を拡大しており、PFCは現代的な手法を取り込んだカルトとも捉えられます。

日本でQアノンが広がった理由

以上のことから、日本でなぜQアノンが広がりを見せたのかについて、原因の一端を考察してみます。

この記事で明らかにしたように、日本のQアノンを自称するインフルエンサーは、そのほとんどがPFCというUFOカルト思想の支持者であり、彼らが支持しているのはドナルド・トランプではなく、その上位にいると彼らの信じている宇宙人です。

PFCはアシュタールコマンドという70年前から続く宇宙人信仰から生まれた団体です。アシュタールコマンドはその歴史の中で「人類の意識の統合」というコスモポリタニズムのような方向性を獲得し、世界へと広がりました。

その流れを受け継ぐPFCも、これまで主張されてきた世界の陰謀はそれぞれ独立して存在するものではなく、「闇の宇宙人」による単一の計画なのだという思想を抱えています。これは米国の陰謀論のパッチワークで出来ているQアノンのちょうど上位互換として成立します。

Qアノンはドナルド・トランプの存在と共に日本で著名となりました。PFCの支持者は自分達の思想がQアノンを包摂していることに注目し、PFCが取り込む他の陰謀論も併せて「Qアノン」として宣伝することで支持を獲得しようとしたのではないでしょうか。