やばいブログ

何がやばいのかは想像にお任せします。

【フィクション】【やばい映画】『呪い返し師—塩子誕生』感想 そんなに息子が嫌いになったのか、エル・カンターレ

※17000字くらいある記事なので先に書いておきますが、特にウルトラマンネタはありません。

「やばい映画」第二弾です。幸福の科学制作映画呪い返し師―塩子誕生』を鑑賞しましたので、感想を書いていきます。

作品紹介

幸福の科学制作の最新映画です。幸福の科学は90年代からコンスタントに映画を作り続けていることで有名で、公開作品は本作含め25本を数えます。

幸福の科学映画といえばかつてはアニメ作品が主体でした。2009年に公開された、大川隆法池田大作のサイキックバトルを描く『仏陀再誕』などが有名ですね(って書くと面白そうに見えますが実際は普通につまらないです)。

ところが、2017年に公開された『君のまなざし』を皮切りに、幸福の科学実写作品を積極的に制作していきます。これ以降毎年、多い時には年2本というペースで作品が公開されていますが、アニメ作品は『宇宙の法』シリーズの2本のみで、それ以外は全て実写です。

その『君のまなざし』を監督し、本作でもメガホンを取ったのが赤羽博という人物。ドラマ好きの方なら名前にピンとくるかも知れません。何を隠そう、赤羽監督はあの反町隆史主演のドラマ『GTO』を始め、多数のTVドラマを手掛けた大ベテランの映像作家なのです。

これ以降、赤羽監督は本作を含め実に5本もの幸福の科学映画を撮っています。パンフレットや各種メディアでの発言を見るとかなりシンパシーがあるように見えますが、信者なのかはわかりません。

2017年には女優の清水富美加幸福の科学に出家し「千眼美子」(せんげんよしこ)なる法名を受けるという事件も起きています。また、その翌年にはこれまでアニメ作品を積極的に手掛けていた大川隆法の長男が脱会しており、このような理由から幸福映画を取り巻く環境は大転換したのですね。

本作はそんな新時代の幸福映画の最新の一本。既に主要な映画館からはすずめの大群の飛来によってあっけなく絶滅してしまったこともありますので、以下ネタバレ全開で内容と感想を紹介します。

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【ドキュメンタリー】【やばい映画】『おはよう - 参政党の歩み -』感想 何者にもなれなかった男の『ビューティフル・ドリーマー』

このブログのタイトルは『やばいブログ』ですが、実は最初『やばい映画ブログ』にしようと思っていました。

カルト宗教とか、陰謀論とか、その他よくわからないことをしている映画とか、そういう「ほとんどの人の鑑賞の選択肢にも入らない」ような映画をわざと鑑賞して感想を書いてみようかな、と思ったのです。

まあ色々考えた(内容を狭めるようなタイトルをつけると後々困るんじゃないか、とか)結果、好きなドキュメンタリーの感想を書いたり、陰謀論ウォッチ記事を書いたりするブログになったわけですが(とはいえ当初のコンセプトは捨てていないつもりです)、この度、当初の目的に立ち返るような記事を書くことができました。

というわけで、今回は参政党の公式ドキュメンタリー映画『おはよう - 参政党の歩み -』を鑑賞しましたので、内容と感想を紹介していきます。

作品紹介

このブログをご覧の方々で「参政党」という存在を全く知らないという方は多分いないと思いますが、一応説明しておくと、神谷宗幣という元吹田市議会議員が2020年に設立した政治団体で、今年の参院選で神谷が比例当選し、国政政党の要件を得ています。

新興政党ながらSNSなどを活用した積極的なアピールで規模を拡大し、公示日前に3万人の党員3億円以上の寄付金を集め、参院選でも176万を超える比例票を獲得し注目された一方、「小麦を食べると水銀中毒になる」「ワクチンは殺人兵器」などの反医療的言説や「世界は国際ユダヤ金融資本に支配されている」という陰謀論を公式に主張していることで悪い意味で話題となることのほうが多い政党です。

そんな参政党は、参院選後に公式ドキュメンタリー映画の制作を発表し、9月30日から全国で公開されています。後述の通り選挙期間前から撮影を始めているため、おそらく選挙の結果とは関係なく発表される予定だったものと思われます。

本作は一般の劇場では公開されておらず、全国の参政党員の手によって自主上映されており、チケットは参政党の公式サイトからでないと購入できません。

というわけで、筆者は実際にチケットを購入し鑑賞してまいりました。某所に作られた簡易的なシアター。周りの観客は当然皆参政党員なのはマスクをしているのが筆者だけであることからもビンビンに伝わってきます。

参政党の、参政党による、参政党のための映画。一体どんな世界が展開されてしまうのか?筆者はこの空間に耐えられるのか?以下レポートです。

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【ドキュメンタリー】【映画】『バビ・ヤール』感想 歴史はサイレントフィルムにあらず

公開中のドキュメンタリー映画『バビ・ヤール』を鑑賞しました。

作品紹介

ウクライナ発のドキュメンタリー映画です。「バビ・ヤール」とはキーウ郊外の峡谷の名前で、第二次世界大戦当時、ナチス・ドイツ占領下で数万人のユダヤ人が虐殺された現場としても知られています。

本作は、このバビ・ヤールでの虐殺事件を描いたもの。インタビューやナレーションを一切用いず、当時の記録映像のみを繋ぎ合わせて作る、いわゆる「アーカイバ」というジャンルです。

監督はウクライナ出身のセルゲイ・ロズニツァという人物で、欧州では新進のドキュメンタリストとして以前から注目されており、日本でも一昨年3作品が輸入されたのを皮切りに少しずつ話題となっていました。

そこに今年のロシアによるウクライナ侵攻が重なり、緊急輸入された監督初の劇映画『ドンバス』がニュースで取り上げられ、海の向こうでは氏の侵攻に対する言動が話題になるなど、一気に大注目の監督となっています。

以下に内容と感想を書いていきます。

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【陰謀論】三浦春馬は如何にして陰謀論の的となったか(その2)

前回に引き続き、三浦春馬陰謀論の動向について調べた内容をまとめていきます。

前回は、三浦春馬陰謀論の大元である「三浦春馬他殺説」が形成される過程について考察しました。初期のマスメディアによる不確かな報道がいくつかの都市伝説じみた憶測を形成し混ざり合い、死後1ヶ月ほどで「他殺説」へ結実したと考えられます。

その後、この「他殺説」を巡っていくつかのインフルエンサーが登場しました。それにより、他殺説はネット上の風説の域を超えて現実社会での活動にまで発展していくことになります。

筆者撮影。今年6月のデモの参加者が掲げていたプラカード(?)

今回は、そうしたインフルエンサーやグループについて追っていきます。

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【陰謀論】三浦春馬は如何にして陰謀論の的となったか(その1)

俳優の三浦春馬さんが亡くなってから2年が経ちました。命日には今も多くのファンが別れを惜しみ、様々な形で故人を弔っているようです。

その一方、死去間もない頃から現在まで、一部の人々の間で三浦春馬は何者かに殺害された」とする陰謀論が唱えられ続けています。昨年末頃からは警察による再捜査などを求めるデモが行われるようになり、全国にまで拡大する大規模なものとなっています。

ウォッチャー撮影画像より、今年6月に行われたデモ

これらの陰謀論全て事実無根のデマであり、三浦春馬の所属事務所であったアミューズ法務部のTwitterアカウントを開設、ネット上での注意喚起と共に発信者に対する法的措置を進めています

今回は、現在まで続く三浦春馬陰謀論がどのようにして拡散されていったのかについて、その成り立ちを調べてみました。

注意:以下、三浦春馬さんの死去当日の状況やネット上の書き込みを多く参照しており、人によってはフラッシュバックを受ける可能性があります。

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【陰謀論】「ウクライナの生物兵器研究所」デマを巡る13年の旅路

ロシア軍がウクライナへと侵攻して間もない2022年3月8日、世界中の人々を困惑させる発表がロシア当局によってなされました。ウクライナには米軍傘下の生物兵器研究所が存在し、秘密研究を行っているというのです。

実はそれより前、ウクライナ侵攻が始まった時点の段階から、日本含めネット上の一部の陰謀論者の間で同様の陰謀論が拡散されていました。発端となったのはこのツイートだと考えられています(こちらについては後述)。

ツイートのアーカイブスクリーンショット、当該アカウントは凍結済み

一見すると、降って湧いたネット上の陰謀論に一国が便乗するという地獄絵図のように思えます。しかし、詳しく調べていくと、この陰謀論にはより闇の深い地獄が広がっていました。

この陰謀論は実に13年もの間、様々な人々の手を経て絶えることなく語り継がれてきたものだったのです。

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【ドキュメンタリー】【映画】【配信あり】『なぜ君は総理大臣になれないのか』感想 迷い続ける政治家

Amazon Prime Videoにて配信中の『なぜ君は総理大臣になれないのか』について、感想を書いていきたいと思います。

先立って、本作の続編である香川1区』の感想も投稿しておりますので、そちらも併せてお読みいただけたら嬉しいです。

作品紹介

立憲民主党所属の衆議院議員である小川淳也の選挙活動を追った作品です。

小川淳也香川県高松市生まれで、東大を卒業後自治省(後の総務省)に入省、32歳で退職し民主党から衆院選に出馬します。しかし、小川の出馬する香川1区は自民党所属の平井卓也が極めて強い地盤を形成しているため、選挙区では落選を続けていました。

本作の監督である大島新の妻と小川が顔見知りの関係であったことから撮影が始まったという映画で、小川の初出馬から2020年までの17年間の様子が記録されています。

自主制作の政治ドキュメンタリーというニッチなジャンルながら、対立する平井卓也も認める「キャッチーなタイトル」や内容が話題となり、徐々に上映館が拡大し3万5000人以上の観客動員(ドキュメンタリーの世界では大ヒット)を記録したようです。

国会議員を対象にしたドキュメンタリーですが、彼の政治観や思想が宣伝されることはなく、ひたすら選挙運動に焦点が当てられています。想田和弘選挙』や藤岡利充『立候補』のようないわば「選挙ドキュメンタリー」のジャンルです。

とはいえ、国会議員の選挙運動を取り上げた映画は非常に珍しいです(変則的ですが原一男の『れいわ一揆』ぐらいでしょうか)。さらに、小川淳也はその絶妙なポジションから民主党政権崩壊以降の野党の激動に翻弄された人間でした。

以下、当時映画館で観た時の感覚を思い出しつつ、改めて配信で鑑賞した上での感想を書いてみたいと思います。

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